イエメンコーヒーと聞いてピンとこない方も「モカコーヒー」と聞くと、おわかりになるのではないでしょうか。
- まるでワインのような上品な酸味
- 独特でスパイシーな香り
このような特徴を持つイエメンコーヒーは、かつて中東イエメンのモカ港から出荷されていたことから、「モカ」と呼ばれるようになりました。
強いクセのあるイエメンコーヒーは、世界中に多くのファンがいます。人の心をつかんで離さない魅力とはどのようなものなのでしょうか?
今回、「幻のコーヒー・コーヒーの貴婦人・コーヒーの女王」と名高い、イエメンが誇るコーヒーについてご紹介いたします。
アラビアンナイトの世界からやってきたイエメンコーヒーの魅力をどうぞご覧ください。
1. イエメンコーヒーとは?特徴を紹介!
上品な酸味で、人々を魅了し続けるイエメンコーヒー。酸味だけではなく、「甘さ」と「コク」という特徴も備えています。
「酸味」「甘さ」「コク」、特徴を文字で見ているだけでもゴクリと喉を鳴らしてしまうイエメンコーヒーについて詳しく見ていきましょう。
産地はどこ?
イエメンコーヒーの産地は、中東イエメンの山岳地帯にある「バニーマタル」が1番有名です。
バニーマタルとは、アラビア語で「雨の子孫たち」。標高2,000メートルほどの高い場所にあるため、雨がたくさん降る地域です。
雨量の多さと適度な湿気、そして暑すぎない気候は、コーヒー豆を作るのに最適な環境!イエメンコーヒーの中でも最高級と称えられています。
バニーマタルで産出されたイエメンコーヒーは、「モカマタリ」と呼ばれます。お店でも探してみてくださいね。
豆知識:イエメンコーヒーは別名「モカコーヒー」
ちなみに、イエメンの対岸にあるエチオピアのコーヒー豆も同じ「モカ港」から出荷されていたので、「モカ」と呼ばれています。
中東イエメン産とエチオピア産を区別するために、中東イエメン産のコーヒー豆を「イエメンモカ」、エチオピア産を「エチオピアモカ」と呼ぶようになりました。
実は中東イエメンがコーヒー文化の始まりの地なのです。
それは徳川家康が江戸幕府を開くよりも100年以上も昔のお話。エチオピアで発見された「コーヒーノキ」が中東イエメンに植樹されました。
イエメンでコーヒーを飲み始めたのは、イスラム教徒たち。修行中の眠気覚ましに飲んだことが、コーヒー文化の始まりと言われています。
当初はコーヒーを味わうというよりは、「興奮作用」に期待して飲用していたのでしょうね。
その後、次第に周囲の国々へ、そして世界へとイエメンのコーヒーは広がっていきました。
この当時世界中で飲まれていたコーヒーは、すべて「モカ港」から出荷されたコーヒー豆だったので、コーヒーのことを「モッカ」と呼んでいたほど。
普段わたしたちの生活に欠かせないコーヒーが、中東イエメンから始まっていたなんて驚きですよね。
当時のイスラム教徒たちがコーヒーを飲んでいる、その様子を思い浮かべたくなります。
イエメンコーヒーといえば、バニーマタル地方で収穫された「モカマタリ」が有名です。
イエメンのコーヒーは等級が明確ではありませんが、「モカマタリ」は欠点豆の混入が少ない順にNO.9からNO.6に割り振られています。
その中でも、豆が大きく品質の良い豆を厳選し集めたものを「アールマッカ」といい、モカマタリの極上豆とされています。
どんな味がするの?
イエメンコーヒーを形容するときによく使われる3つの言葉があります。
- フルーティーでワインのような酸味
- 後味にくる甘み
- 濃厚なコク
コーヒーのイメージといえば「苦味」なのに、ワインのような酸味なんていまいち想像しがたいですよね。
じつはコーヒーの実はれっきとした「果実」なので、乾燥させる前は、サクランボのような外見をしていて、味もフルーツのような甘酸っぱさを持っているんです。
それを知ると、コーヒーの酸味に少しだけ納得できるのではないでしょうか。
また、イエメンは昔と同じく石臼を使った精製方法を用いているため、豆が欠けたり、不揃いになる率がとても高いです。しかし、その不揃いさが、イエメンコーヒー独特の酸味を作り出しています。
他のコーヒーにはない、独特な風味を持つので、好き嫌いがわかれるコーヒーです。
独特な風味と酸味、そして苦味のバランスが良いため、ストレートで飲むのがおすすめですが、ミルクとの相性も良いので、その日の気分で飲み分けるといいですね。
どんな香りなの?
イエメンコーヒーが持つ魅惑の香りは、以下3つのように形容されることが多いです。
- 独特でスパイシーな香り
- チョコレートのような甘い香り
- 柑橘系の爽やかな香り
淹れたてのイエメンコーヒーからは、エキゾチックなスパイシーな香りが漂います。次にやってくるのは、コーヒーを口に含んだときに感じるチョコレートのような甘い香り。そして最後、フルーツの爽やかな香りが口に残ります。
この「チョコレートのような甘さ」は、「カフェモカ」のルーツになっています。「モカ」の香りに似せようと、コーヒーにチョコレートを加えたことが始まりと言われています。
表情多彩な香りを持つイエメンコーヒーだからこそ、世界中に根強いファンがいるのでしょうね!
どんな豆なの?
イエメンコーヒーの豆には、大きく3つの特徴があります。
- 小粒で丸みを帯びている
- 大きさ、形がそろっていない
- 一部が欠けた「欠点豆」が多い
欠けている豆が多いため、初めて本物を見たときに「あれ?古い豆を買っちゃったかな?」とビックリしてしまうかもしれません。でも、このビジュアルには理由があります。
- イエメンは農場経営ではなく、各農家が伝統的農法でコーヒー栽培をしている
- 昔ながらの石臼で豆を脱穀しているので、豆が欠けやすい
- 豆の評価が統一されていない
イエメンは他のコーヒー産地と違って、大農園がありません。コーヒー農家がそれぞれ伝統的な栽培方法に基づいて、コーヒー豆を育てています。 そのため、農家によって豆の収穫時期や乾燥期間が異なり、豆の品質にバラツキが出やすいのです。
また、石臼でコーヒー豆を脱穀しているのも、欠点豆が多い理由の一つ。全て手動なので、専用の機械を使うより豆が割れやすくなります。
さらに、イエメンでは「コーヒー豆の品質」を評価する明確な基準がありません。他の国のように、厳しく統一された基準で豆を選別しているわけではないのです。
以上の3つの理由から、イエメンコーヒーは他の国の豆に比べてサイズが不揃いで、欠点豆も多くなっています。
世界最古のコーヒーの歴史を持ちながら、現在まで一途に変わることのないコーヒーを味わうことができる。これもイエメンコーヒー豆の魅力です。
2. イエメンコーヒーの淹れ方
先ほど、イエメンコーヒーには欠点豆が多いと説明しましたね。
欠点豆がたくさん入っていると、コーヒーにしたとき雑味が出てきがちになります。
クリアな味を出すためには、豆を焙煎する前に欠点豆を取り除く「ハンドピック」という作業が重要です。
ただ、その欠点豆が複雑な香りを作り出してもいるので、ハンドピック加減が難しい一方、「手間がかかる子ほどかわいい」といった感じでしょうか。
そんな手間をかけるほどおいしくなる、イエメンコーヒーの淹れ方をご紹介します!
イエメンコーヒーは、ハンドドリップで淹れよう|ポイントは「蒸らし」!
イエメンコーヒーは天日乾燥のコーヒー豆なので、蒸らすことでおいしさがUPします。お湯をコーヒー豆全体にまんべんなく染みこませ、蒸らし時間を30秒ほど取りましょう。
天日乾燥でギュッと濃縮された甘みとうまみを味わうことができますよ!
抽出するお湯の温度は85℃前後がおすすめです。コーヒーが抽出されたら、すぐドリッパーをはずしましょう。
浅煎り(ミディアム)のイエメンコーヒー
浅煎りにすることで、イエメンコーヒーが持つ酸味と香りを存分に引きだすことができます。イエメンコーヒーらしさを味わいたいときには浅煎りがおすすめです。
中煎り(ハイ)のイエメンコーヒー
イエメンコーヒーの魅力はなんといっても、フルーティーでスパイシーな香りと、ワインのような酸味。その香りと酸味を際立たせるには、中煎りがベストです。コーヒーの貴婦人と称される優雅な香りと、上品な酸味をバランス良く堪能することができます。
深煎り(フルシティ)のイエメンコーヒー
「コク」もイエメンコーヒーが持つ魅力のひとつ。その「コク」をじっくり楽しみたいときには深煎りにしましょう!酸味が抑えられ、「コク」と「苦味」を堪能できます。
ブレンドするのもオススメ
酸味の強いイエメンコーヒーは、苦味のあるコーヒー豆と相性が良いです。
例えば、インドネシアの「ジャバ」とブレンドした「モカジャバ」がその代表例。
「ジャバ」は酸味が強くありません。「モカマタリ」の魅惑的な酸味と「ジャバ」の持つ苦味がお互いを引き立て、またひとつ魅惑的なコーヒーが生まれるのです。
3. オススメのイエメンコーヒー
イエメンコーヒーを語るうえで外せない「酸味」。「ワインのような酸味」をぜひとも味わってみたいですよね。
ただ、中東イエメンは2015年からの紛争により、コーヒー豆の生産量・輸出が激減。最近では、お目にかかる機会が少ないのが現状です。
そこで、通販で購入できるイエメンコーヒーをご紹介します!
レギュラーコーヒーのオススメ3選(どこか1つにお土産にもピッタリの商品を紹介)
気軽に試せるものから、ちょっと高級なものまでイエメンの誇るコーヒーを集めてみました。
MOCHA ORIGINS(モカオリジンズ) モカハラズ
「母国イエメンを救いたい」と、イエメン出身のタレック氏が立ち上げた会社「MOCHA ORIGINS(モカオリジンズ)」。イエメンコーヒー豆を日本へ輸入販売する会社です。
中東イエメンにいる兄と協力し、品質の良いイエメンコーヒー豆のみを販売しています。
コーヒー豆「モカハラズ」は中東イエメン西部にあるアカマで栽培されており、400年以上続くコーヒー農家によって作られました。
モカハラズの特徴は、フルーティーさと、はちみつのような甘さを持っていること!本物のイエメンコーヒーを味わうには、ぴったりのコーヒー豆です。

KEY COFFEE モカマタリ
酸味とコクが強く、まろやかな口当たりの「モカマタリ」です。中煎りなので、モカマタリの持つ酸味を存分に堪能できます。
独特な酸味と風味を持つモカマタリのとりこになるのか、そうではないかはアナタ次第!開けてみるまでわからない、ビックリ箱のようなコーヒー豆です。

KALDI COFFEE FARM モカマタリ
ファンの多いKALDIにも「モカマタリ」はあります。ただし取り寄せになるので、受け取るまで1週間ほどかかる点に注意!はやる気持ちを抑えて気長に待ちましょう!

インスタントコーヒーのオススメ
イエメンコーヒーは豆自体の流通が少ないので、インスタントコーヒーはなかなか見つかりません。代わりに中東イエメンの対岸にあり、かつて同じモカ港から出荷されたエチオピアの「モカ」を試してみませんか?
丸福珈琲店プロデュースのインスタントコーヒーエチオピア産は、フリーズドライ製法です。エチオピア産のモカが持つ「酸味・甘み・コク」は、イエメン産のものととてもよく似ています。
「似て非なり」と言うように、イエメンコーヒーと全く同じではありませんが、同じモカ同士が持つ独特な香りを楽しむことができます!
AGFマキシムの「モカブレンド」は、エチオピア産とブラジル産のモカです。パッケージにも書かれているように「あまくフルーティーな香り」と「ふくよかなコク」を味わうことができます。
残念ながら、モカのもつ酸味は抑えられているようです。でも口コミでは「飲みやすい」「癖がない」「おいしい」と評価が高いインスタントコーヒーなので、レギュラーコーヒーと飲み分けるのもアリですね!
4. まとめ
コーヒー文化の始まりといわれているイエメンコーヒー。
イエメンのコーヒーは「モカ」と呼ばれていますが、これは産地によるものではなく、かつてモカ港から出荷されていたことから名づけられました。
同じモカ港から出荷されていたエチオピア産のコーヒー豆も「モカ」と呼ばれています。
イエメンモカの最高級豆である「モカマタリ」は、「コーヒーの貴婦人」と称えられています。
その由縁はワインと形容される上品な酸味によるもの。上品な酸味を余すことなく味わうためにも、焙煎は中煎りがおすすめです。
現在も昔ながらの農法により栽培を行っているので、欠点豆が多いことも特徴の1つ。
欠点豆を取り除く加減により、より貴婦人らしくなるのか、はたまた貴婦人ではなくなってしまうのか気難しい面を持っています。
こちらの思い通りにいかない気難しい点も含めて、人々を惑わし続ける魅力的なコーヒー豆。それがイエメンコーヒーなのです。